法人化の無料相談でシミュレーションを依頼すると、同じ売上・同じ条件でも税理士によって試算結果が数十万円単位でずれることがあります。私はAFP・宅地建物取引士として都内で法人を経営していますが、2026年の法人設立前に3社の税理士事務所へ無料相談に足を運び、節税試算と顧問料見積を並べて比較しました。その実体験をもとに、1人社長が無料相談を最大限に活用するための手順と判断軸を解説します。
法人化無料相談の活用目的と正しい期待値
無料相談で「何を得るか」を事前に決めておく
無料相談は税理士側の営業機会であると同時に、あなたが税理士の実力と相性を見極める場です。この認識のズレが、相談後に「なんとなく良さそうだったので契約した」という後悔につながります。
私が3社に相談する前に用意したのは、①直近12か月の売上・経費の概算、②現在の個人事業主としての所得税納付額、③法人化後に想定される役員報酬の希望額、の3点です。これを1枚のメモにまとめて持参しました。数字を持ち込むと、相談が「概論の説明」ではなく「あなたの案件の試算」に変わります。
無料相談で得るべき成果物は、(1)法人成りシミュレーションの数値、(2)顧問料と決算料の見積、(3)担当者の専門性と相性の確認、この3つです。1社目の相談を終えた時点で「何が足りなかったか」を振り返り、2社目以降の質問を修正していくと精度が上がります。
無料相談が「無料」である理由を理解する
税理士事務所の無料相談は、顧問契約・記帳代行・会社設立手続き代行などの有償サービスへの入り口です。相談料が発生しないのは、成約後の顧問料収入を見込んでいるからであり、あなたへの「サービス」ではなく「投資」として提供されています。
この構造を理解しておくと、担当者の説明にも「この提案は顧問契約獲得のために最適化されていないか」という視点が持てます。たとえば役員報酬の設定を高めに提案する税理士は、社会保険料の増加リスクを十分に説明しているか。節税効果の試算に均等割や社会保険の法人負担増が含まれているか。こうした細部に担当者の誠実さが出ます。
なお、紹介サービス経由で税理士に相談する場合、紹介手数料は成約後に税理士側から支払われる仕組みが一般的です。あなたの相談料・顧問料に直接上乗せされるわけではありませんが、紹介サービスの選定にあたっては仕組みを確認しておくことをお勧めします。
私が3社シミュレーションを比較した手順と気づき
3社それぞれに「同じ条件」で試算を依頼した
私は2026年の法人設立にあたり、都内の税理士事務所3社に順番に無料相談を申し込みました。条件はすべて同一です。売上規模・経費概算・希望役員報酬・事業内容(インバウンド民泊)を統一したメモを持参し、「法人化した場合の節税試算と、顧問料の見積を出してほしい」と最初に明示しました。
結果として、3社の節税試算には最大で年間約30万円の差が生じました。この差は計算ミスではなく、「どの費目をどう計上するか」「役員報酬をいくらに設定するか」「社会保険料増加分をどう見積もるか」という前提条件の置き方の違いから生まれていました。法人成りシミュレーションは「同じ答えが出るもの」ではなく、税理士の考え方と経験が反映される試算書です。
1社目は節税効果のみを強調し、均等割(東京都の場合、資本金1,000万円以下・従業員50人以下で年間約7万円)と社会保険の法人負担増を試算に含めていませんでした。2社目は逆に社会保険料の増加を強調しすぎて、所得税・住民税の節税効果を控えめに提示していました。3社目が最もバランスの取れた試算を出してくれたため、最終的にそちらと顧問契約を締結しました。
顧問料の見積を「比較可能な形」で揃える方法
顧問料の見積は、表面の金額だけ比べると判断を誤ります。A社は「月額顧問料2万円」でも決算料が別途25万円、B社は「月額3万円込み・決算料込み」という構成だったりします。年間総費用に換算して初めて比較が成立します。
私が3社に依頼した見積の内訳は、①月額顧問料、②決算・申告料、③記帳代行料(自分で入力するか否か)、④会社設立手続き代行料(初年度のみ)の4項目です。これを横並びにした表を手書きで作り、相談後すぐに書き留めました。
実感として、1人社長・売上規模1,000万円前後の法人の場合、顧問料の相場感は月額2万〜4万円、決算料は年間15万〜30万円程度が目安です(事務所規模・地域・サービス内容により異なります)。記帳を自分でクラウド会計ソフトに入力するか否かで、月額顧問料は1万円前後変わることが多いです。最終的な費用判断は、実際に見積書を取得した上で行ってください。
節税試算で見落とした均等割と社会保険の実態
均等割7万円は「固定コスト」として必ず織り込む
法人化のシミュレーションで最初に見落としやすいのが、地方法人税の均等割です。法人住民税の均等割は、赤字であっても課税される固定コストです。東京都の場合、資本金1,000万円以下・従業員数50人以下の法人であれば、都民税均等割と特別区民税(23区内)を合算して年間約7万円が最低限かかります。
私が1社目の無料相談で受け取ったシミュレーション資料には、この均等割が含まれていませんでした。担当者に指摘すると「少額なので省略した」という回答でしたが、年間7万円は1人社長にとって無視できる金額ではありません。試算の信頼性を測るリトマス試験紙として、「均等割は含まれていますか」と確認することを強くお勧めします。
なお、均等割の具体的な金額は自治体・資本金・従業員数によって異なります。詳細は所轄の都道府県税事務所または税理士に確認してください。
社会保険料の法人負担増は「節税効果の相殺要因」になる
法人化すると、代表者(あなた自身)も社会保険(健康保険・厚生年金)に加入することになります。個人事業主時代の国民健康保険・国民年金と比べると、法人側が保険料の約半分を負担するため、節税効果の一部が社会保険料の増加で相殺されます。
保険代理店に勤務していた頃、私は多くの個人事業主・経営者の方々の社会保険と税負担の最適化相談に関わってきました。その経験から言えるのは、「節税試算だけ見て法人化を決める」のは危険だということです。社会保険料の増加額・均等割・税理士顧問料を含めたトータルコストが、個人事業主時代の税負担を上回るケースも実際にあります。
役員報酬の金額設定は、所得税・住民税の節税と社会保険料のバランスを考慮して決める必要があります。この設定は法人設立後すぐに決め、原則として年1回しか変更できないため(定期同額給与の原則・法人税法第34条)、税理士と十分に相談してから決定することが重要です。具体的な金額は個別の事情により大きく異なりますので、必ず税理士に相談してください。
無料相談で確認すべき5項目と見極めポイント
相談前に準備する5つの確認事項
無料相談を有意義にするためには、「聞かれたことに答える」ではなく「確認したいことを先に伝える」姿勢が必要です。私が3社への相談で確認した項目を整理します。
- 節税試算の前提条件:均等割・社会保険料法人負担増・役員報酬設定の根拠が明示されているか
- 顧問料の年間総費用:月額・決算料・記帳代行料・初年度設立費用を含めた年間合計額
- 担当者の業種経験:インバウンド民泊・不動産・個人事業主の法人化案件を扱った経験があるか
- 連絡・対応体制:担当者は固定か、メール・チャットでの質問対応の可否と目安応答時間
- 消費税の課税タイミング:設立から2年間は原則免税(消費税法第9条)だが、資本金1,000万円以上や特定要件では初年度から課税となるケースの説明があるか
5項目すべてを自然な会話の中で確認できる税理士は、説明力と誠実さの両方を備えています。逆に「設立してから考えましょう」「詳細は契約後に」という言葉が多い担当者には注意が必要です。
「相性」を判断する3つの観察ポイント
税理士選びで数字の比較と同じくらい重要なのが、担当者との相性です。顧問契約は年単位で続く関係であり、決算前打ち合わせや税務調査時の対応など、ストレスなく相談できる関係性が不可欠です。
私が3社の相談を通じて感じた相性の判断ポイントは3つです。第一に、「わからないことをわからないと言えるか」。私の事業(インバウンド民泊)は旅館業法・消費税・源泉徴収が複合する分野で、即答できない論点もあります。その場で調べて後日回答してくれる担当者は信頼できます。第二に、「こちらの質問を遮らずに最後まで聞くか」。第三に、「節税の話だけでなくリスクも対等に話すか」。
AFP・FP資格の観点から補足すると、税理士は税務の専門家であり、保険・資産運用・キャッシュフロー管理の全体最適はFPの領域と重なります。法人化後の資金計画や役員保険の活用など、税務と財務の両面で相談できる環境を整えることをお勧めします。ただし具体的な税務判断はすべて税理士へ相談することが前提です。
相談後の税理士選定基準とまとめ
3社比較で私が最終的に重視した判断軸
- 試算の透明性:均等割・社会保険・設立費用を含めたトータルコストが明示されているか
- 業種への理解度:インバウンド民泊・不動産系の税務に関して具体的な言及があったか
- 顧問料の年間総費用:月額だけでなく決算料・記帳代行料を含めた実費合計で比較したか
- 担当者の固定制:毎回異なる担当者ではなく、担当が原則固定されるか確認したか
- リスク説明の誠実さ:節税効果だけでなく、社会保険料増・消費税課税タイミング・均等割のコストを自発的に話したか
この5軸を使って3社を採点すると、自然と優先順位が決まります。最終的な選定は「費用が最安」ではなく「費用対価値が最大」で判断することをお勧めします。個別の事情により最適な税理士は異なりますので、最終判断は複数社との面談を経て行ってください。
法人化の無料相談はスタート地点、次の一歩を踏み出す
法人化の無料相談は、決断のためではなく「情報の非対称を埋めるため」に使うものです。私が3社のシミュレーションを比較した結果、節税効果の試算値だけでなく、担当者の説明姿勢と透明性の差が最大の判断材料になりました。
法人化後の税務は、設立登記・役員報酬の決定・消費税の免税判定・決算・法人税申告と、個人事業主時代とは比較にならない手続きが続きます。顧問税理士はその全過程を伴走するパートナーです。無料相談を「とりあえず話を聞く場」として軽く扱わず、判断のための情報収集と位置づけることが、1人社長の法人化を成功させる最初のステップです。
法人化のシミュレーションや無料相談の申し込みを検討しているなら、会社設立専門の税理士法人に相談することを強くお勧めします。なお、本記事の内容は一般的な解説であり、個別の税務判断については必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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